遺言書を作成する目的

遺言書を作成する目的(メリット)は下記の2つがあります。

  1. 遺言する人(遺言者)が亡くなった後、遺言者の思いにしたがって遺産(財産)の処分ができること
  2. 相続人同士の遺産相続の争いを回避すること

特に上記②の「相続争いの回避」のメリットは大きいです。遺言が無いと、相続人同士で相続財産について話し合いが必要です。(遺産分割協議)大抵、この話合いで言い争いが生じます。争いが大きくなると、調停→訴訟と、面倒なことに…。

家族構成にもよりますが、一般的に親子、兄弟で揉める傾向があります。 遺言は遺言者の「この世で最後の家族への努め」と、このように思います。

遺言書の種類

自筆証書遺言

自分で作成する遺言書のこと。インターネットで検索すれば作成方法を教えてくれますが、インターネットの情報はあくまで一般的な内容で、遺言書は遺言者の資産状況、家庭状況によって異なります。つまり自分で作成する場合はしっかりと調べ上げた上で作成しなければなりません。

※専門家(弁護士、司法書士、行政書士等)に相談しながら自分で遺言書を作成する事も可能です。

 

自筆証書遺言ーメリット

作成に費用がかからずいつでも作成できます。

自筆証書遺言ーデメリット

自分で作成した遺言書の内容に不備があると無効(遺言書として扱われない)となる可能性があります。

【無効となる例】

  • 夫婦2人で1つの遺言書を作成した。(法律上、2人で作成することは禁止)
  • 作成日を「昭和41年7月吉日」と記入した。(日付の記載を欠くものとして無効)
  • 遺言書を紛失
  • 遺言書を作成していても、遺言者の死後、遺言書が発見されない
  • 自筆か否か、つまり遺言書の筆跡が遺言者のものかどうか疑いが生じる。
  • 遺言書を検認が必要
    ※検認とは遺言書が本人が作成したものか、内容が法律通りになっているか等、家庭裁判所が確認すること

公正証書遺言

公正証書遺言とは、その名の通り、遺言書を『公正証書』にして公証人役場に保管してもらう方法です。

そもそも公正証書とは、『公文書として作成した証書』の事です。

公正証書は『公証役場』という場所で『公証人』が関わって書類を作成しますので、遺言書の内容は法律に沿った内容となり、後々のトラブル防止を防ぐことができます。

また、証人2人の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言内容を説明して公証人が書面化して読み聞かせ、遺言者と証人がその書面が正確であることを確認して署名・押印し、さらに公証人が署名・押印します。

公正証書遺言ーメリット

  • 公証役場で保管するため確実
  • 遺言書の原本は、公証役場に保管されるため、遺言書を破棄、紛失、内容の改ざん等がありません。
  • 遺言書の検認手続が不要。(家庭裁判所の確認が不要)
  • 自書する必要はありません。

公正証書遺言ーデメリット

  • 費用がかかる。
    ※専門家を交えて作成する場合、専門家への報酬と公証役場に支払う手数料が発生します。)
  • 証人2名が必要。

公正証書の予備知識

公正証書は遺言書の作成に限らずお金の貸し借りを行なうときにも多く利用されています。

例えば、一般に作成される契約書(公正証書ではない契約書)でもお金の貸し借り契約はできます。しかし、不払いが起きたときて、債務者の財産を差し押さえるためには、裁判をしなければなりません。裁判をするには弁護士さんを雇ったり、手間暇がかかります。

しかし、『公正証書』で契約書を作成すれば裁判の手続をすることなく、お金を受け取る側は支払いを約束した側の財産を差し押さえる手続(強制執行)が可能になり、手間暇が不要となります。

公正証書遺言書 手数料

遺言の目的となる財産の価額によりその手数料が、下記のとおり定められています。

〇 目的価額が100万円以下→ 手数料5,000円

〇 目的価額が100万円~200万円以下→ 7,000円

〇 目的価額が200万円~500万円以下→ 11,000円

〇 目的価額が500万円~1000万円以下→ 17,000円

〇 目的価額が1,000万円~3,000万円以下→ 23,000円

〇 目的価額が3,000万円~5,000万円以下→ 29,000円

〇 目的価額が5,000万円~1億円以下→ 43,000円

公正証書遺言 準備物

公正証書遺言を作成する際は下記のものを準備します。

(1)戸籍謄本

遺言者の相続人に相続させる場合、遺言者と相続人それぞれの戸籍謄本が必要になります。
なぜ戸籍謄本が必要かというと、戸籍謄本を取り寄せて遺言者と相続人が親族関係であるか否かを確認します。
戸籍謄本は遺言者と相続人(人数分)それぞれ1通必要です。遺言者と相続人が同一の戸籍に入っている場合は、戸籍謄本1通のみです。また、戸籍謄本は相続人であることが分かるまでの全ての(遡って)戸籍謄本が必要になります。

(2)遺贈される人(財産を譲り受ける人)の住民票

遺贈される人とは、相続人以外の人の事です。例えば、友達に財産をあげるケースがこれに該当します。
遺贈される人の住民票を取り寄せ、『住所、氏名、生年月日、職業』を確認します。

(3)固定資産評価証明書 各1通

遺言書に不動産を記載する場合、その不動産の固定資産評価証明書が必要になります。
不動産所在地の市区町村役場の固定資産税課より、取得します。

(4)不動産の登記簿謄本 各1通

『固定資産評価証明書』同様、遺言書に不動産を記載する場合、土地、建物の不動産登記簿謄本(登記事項証明書)が必要になります。不動産がある場所の管轄する法務局で取得できます。

(5)遺言者の印鑑証明書(3ケ月以内のもの)1通

印鑑を登録した市町村役場で印鑑証明書が取得できます。

(6)通帳のコピー 各1通

預金残高は公証人手数料の計算に必要となります。

(7)有価証券等のコピー 各1通

遺言書に有価証券(株)等を記載する場合に必要となります。

(8)生命保険証書のコピー 各1通

遺言者が被保険者となっている生命保険があり、遺言書で生命保険を変更する場合に必要となります。

(9)本人確認資料の写し

遺言者本人の確認書類として運転免許証、パスポート等の写しが必要です。
住所、氏名、生年月日、職業を確認します。

※上記必要書類は公証人によって若干異なりますので、作成の際には公証人に確認が必要です。40

遺言書は誰が作成するのか?

基本、遺言書を作成するのは『遺言者』だけです。しかし、遺言書を作成するなんて人生で一度きりはずです。どんな内容で書けばいいのか、わからないのが普通です。作成する方法として通常、下記のいずれかになります。

(1)遺言者が自分で作成した場合

メリット

  • 自分1人で手軽、自由に書ける。
  • 費用がかからない。
  • いつでも気軽に書き直せる。
  • 遺言書の内容を秘密にできる。

デメリット

  • 手間がかかる。
  • 無効になることがある。(無効とは、遺言書の効力が生じない事です)
  • 亡くなった後、発見されないことがある。
  • 保管は自分がしなければいけない。
  • 遺言書は1通しか有効にならない。
  • いくつも遺言書を残すとややこしくなる。
  • 遺言書が本物か否か、家庭裁判所の検認(確認)が必要となり、相続時の手続きが面倒になる
  • 亡くなった後、本当に本人の意思で書かれたものか否か、遺言書の内容が疑われる。
  • 何度も書き直すと、嫌になって途中で諦めてしまう。

(2)専門家に作成を依頼

メリット

  • 専門知識が豊富なため、内容が不備なく出来上がる
  • 経験豊富なため相続時の争いを避ける遺言書の提案ができる
  • 遺言者が亡くなった後も、相続手続きに関与する事ができる

デメリット

費用がかかります

専門家へ作成を依頼した場合…

弁護士へ作成を依頼

メリット

法律の専門家です。遺言作成においても最も信頼できる専門家です。万が一、相続時に争いごとがおきた場合、当事者の代理として相手方との交渉もできます。

デメリット

「報酬が高いこと」です。法律の専門家なので仕方がないかもしれません…。
費用の目安は一般的な財産(数百万円の預金と不動産所有を想定)の方であれば20~30万円前後。

司法書士へ依頼

メリット

法律業務の範囲は弁護士に劣る部分はありますが、費用、業務内容面では一番バランスがとれている専門家です。万が一、相続時に争いごとがおきた場合、簡裁訴訟代理権認定を受けた司法書士は、簡易裁判所事件において請求額140万円までであれば代理人(弁護士同様)になることもできます。費用も弁護士より低額です。

デメリット

司法書士はあくまで相続登記の専門です。費用の面では弁護士より低額ですが、行政書士と比較すると高額な傾向となっております。費用の目安は約7~15万円。亡くなった後、不動産の名義変更が発生する場合、司法書士へ依頼することも可能です。(名義変更登記は相続人でもできます。)

行政書士へ依頼

メリット

一番は費用が安くすむ点です。行政書士の本業は『書類作成の専門家』。遺言書も「書類作成」の一つです。比較的身近な存在のため、相談等がしやすい傾向があります。

デメリット

相続時に係争があった場合、関与する事はできません。行政書士は争い事について「代理人」になることは法律上、禁止されています。このような場合、行政書士は提携している弁護士と一緒に対応することになります。

費用の目安は約7~15万円。行政書士の中には、財産の大きさに関係なく定形的な料金体系をとっている事務所も多いです。