風俗営業許可とは?

「風俗営業」と聞くと、性風俗の店を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、実のところ性風俗営業は「性風俗特殊営業」といい、風俗営業とは別のものとなります。

では、どんなものが風俗営業に当たるのかというと…

  • キャバクラ、ホストクラブ(いわゆる社交飲食店)
  • 雀荘店
  • ゲームセンター
  • パチンコ店

これらの店舗を営業する場合、風俗営業にあたり「営業許可」が必要となります。

これらの風俗営業を行うには、公安委員会の許可(警察署)を得なければなりません。もし、無許可で営業すれば厳しい罰則が待っています。

では、深夜にお酒の提供を行うバーやガールズバーにも営業許可が必要かというと、接待行為をせずお酒を提供するだけであれば「許可」ではなく「届出」で済みます。ややこしい話ですが、「接待」があるのか?「お酒」だけの提供なのかで「許可」なのか「届出」なのか異なります。

私たち行政書士は許可が必要な営業なのか?届出で済む営業なのかをしっかし判断し、依頼者とともに手続きを進めていくのが仕事となります。

お客様から「風俗営業許可をとりたい」と問い合わせがあれば、必ず「飲食店営業許可」を取っているかを確認します。それぞれ別の許可です。

大半が飲食店営業許可と風俗営業許可はセットでご依頼されます。そのため、お客様には風俗営業許可だけではなく飲食店営業許可についても許可取得を目指していただきます。

1.風俗営業の種類

許可、届出、営業の種類については全ての風俗営業法に定められています。店舗の名称に関わらずどの種類に該当するのかは実際の営業内容に基づいて決まります。

第1号営業(社交飲食店・料理店)

風営法第2条第1項 第1号

特徴
設備を設けて客の接待をして客に遊興または飲食をさせる営業

【例】キャバクラ・待合・料亭、ホストクラブ

第2号営業( 低照度飲食店

風営法法第2条第1項 第2号

特徴
国家公安委員会規則で定める営業所の照度を10ルクス以下として営業

【例】喫茶店、バー、カップル喫茶

第3号営業(区画席飲食店)

風営法法第2条第1項 第3号

特徴設備
を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営業

【例】喫茶店、バー

第4条営業(雀荘、パチンコ店)

風営法法第2条第1項 第4号

特徴
設備を設けて客に射光心(ギャンブル心)をそそるおそれのある遊技をさせる営業

第5条営業(ゲームセンター)

風営法法第2条第1項 第5号

特徴
遊戯設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるものを備える店舗その他これに類する区画された施設において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業

第6条営業(特定遊興飲食店営業)

風営法法第2条第1項 第6号

特徴
設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に種類を提供して営むものに限る)で、午前6時後翌日の午前0時前の時間において営むもの

【届出】酒類提供飲食店営業

特徴
深夜(午前0時から午前6時まで)において、設備を設けて客に酒類を飲食させる営業で、営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く

ガールズバーは「許可」 or 「届出」?

バーやガールズバーのほとんどでは許可ではなく「届出」業種です。しかし、バーの女性が接待行為を行うのであれば1号営業の許可が必要です。

店の名称が「〇〇ガールズバー」であっても、実態として「接待行為をしている」場合、1号許可が必要となります。

2.接待行為とは?

接待行為を行うことができるのは1号許可だけです。つまり1号許可以外の許可は接待行為を行うことができません。

ではそもそも「接待」」とはどんな行為かというと、風営法許可では定義が決まっており「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されています。

店舗が積極的に客に働きかける行為はたいてい接待になると思ってください。更に具体的に説明すると下記の(1)~(6)が接待行為となります。

(1)お酌をする

特定少数の客の近くに座るなどして、継続して会話の相手になったり、お酌をする行為

(2)ショーなどを見せる

特定少数の客に対して、その客が使用している客室や客室の一部でショー、演奏などを見せる行為

(3)カラオケをする

特定少数の客の近くに座るなどして、その客に対し歌うことを積極的に勧めたり、手拍子や掛け声などで盛り上げる行為や、ヂュエットをすること

(4)ダンスをする

特定の客と一緒に踊る行為、また、客の身体に接触しない場合であっても継続してその客と一緒に踊る行為

(5)ゲームをする

特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為

(6)その他

客と身体を密着させたり、手を握る等客の身体に接触する行為

接待となるポイント!!

店舗側が以下の3つの行為を行うと「接待」となります。

  • 積極的に
  • 特定少数の客
  • 特定の客

そのため、店舗側が積極性が無く、ただ単に客のリクエストに応じてカラオケをセットするような行為は接待行為とはなりません。

また、ダーツなどのゲームを客同士が自主的に行うことも接待行為とはなりません。しかし、店舗側が「ダーツ大会」を開催する等「積極的に」働きかける場合は、接待行為になります。

許可の種類接待行為飲食
1号できるできる
2号できないできる
3号できないできる
4号できない
5号できない
特定遊興できないできる

3.許可手続きは都道府県毎に違います

風俗営業許可申請においては風俗営業法だけでなく、規則、各都道府県条例や公安委員会告示にも注意が必要です。

例えば、許可がとれるかを左右する保全対象施設(学校や保育園等)も、詳細は都道府県条例に定められています。必ず条例を調べてから保全対象施設の調査等を行いましょう。

条例で調べるべき主な事項

  • 営業が制限されている地域はどこか?
  • 保全対象施設は何なのか?
  • 営業時間の延長が認められる地域はどこか?
  • 騒音に関する規制

4.許可の条件

風俗営業法では、申請を許可してはならない「欠格事由」を定めています。

また、営業所の構造及び設備の技術上の基準を定められており、それを満たない場合、許可されません。

(1)人格欠格事由

申請者が以下のいずれかに該当する場合、不許可となります。

  • 成年被後見人もしくは被保佐人または破産者で復権を得てない者
  • 1年以上の懲役もくしは禁固の刑に処せられ、または次に掲げる罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過していない者

上記1、2の他、風営法法49条、50条、刑法、売春法等で欠格事由に該当する人は許可取得することはできません。

外国人は風俗営業許可は取得できるのか?

外国人の方の場合、保有している「VISA」の種類により営業できるか否かが決まります。尚、以下のVISAの場合、申請する事ができます

  • 日本人の配偶者等VISA
  • 永住者、特別永住者VISA
  • 永住者の配偶者等VISA
  • 定住者VISA
  • 経営、管理VISA

※当事務所は外国人ビザ手続きも代行しております。

(2)営業所の設置基準

設備基準とは営業所(店舗)の建物や内容のルールです

  • 1号許可 キャバクラ・待合・料亭、ホストクラブ
  • 2号許可 低照度飲食店≫喫茶店、バー、カップル喫茶
  • 3号許可 区画席飲食店≫喫茶店、バー

1号~3号 共通基準

  • 客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること
  • 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
  • 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
  • 客室の出入り口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入り口については、この限りではない
  • 騒音または振動の数値が規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造または設備を有すること

床面積基準

  • 1号許可

客室の床面積は、和風の客室に係るものにあっては一室の床面積を9.5平方メートル以上とし、その他のものにあっては、一室の床面積を16.5平方メートル以上とすること。ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りでない

  • 2号許可

客室の床面積は一室の床面積を5平方メートル以上(客に遊興をさせる態様の営業にあっては33平方メートル以上)とする

照度基準

  • 1号許可・2号許可 共通

営業所内の照度が5ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造または設備を有すること

  • 3号許可

営業所内の照度が10ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造または設備を有すること

(3)禁止区域

禁止区域とは営業所(店舗)を営業してはいけない場所(地域)のことです。政令という命令に従い都道府県毎が条例で定める地域内に営業所(店舗)があると許可されません。

下記1~3の地域では風俗営業が制限される地域となります

  • 住居集合地域
  • 条例で定める学校、病院等保全対象施設の敷地から100m以内の地域
    (用途地域が商業地域であれば距離制限が緩和されます)
  • 以下の用途地域
  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 田園住居地域
  • 準住居地域

(4)保全対象施設

保全対象施設基準とは、法令で定められた施設の近くでは営業所を設けてはいけませんというルールです。一定の距離を保った場所でないと営業所を設けることはできません。

保全対象となる施設は以下の通りです。

  • 学校等

幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学および高等専門学校
※専門学校は対象外
※高校、大学等にサテライト校舎や通信制校がある場合、その施設も対象となります。


  • 児童福祉法上の施設

助産施設・乳児院・母子生活支援施設・保育所・幼保連携型認定こども園・児童厚生施設・児童養護施設・障害児入所施設・児童発達支援センター・児童心理治療施設・児童自立支援施設及び児童家庭支援センター

「学校」「児童福祉法上の施設」に該当する施設がある場合、当該施設と営業所間が条例で定める距離をクリアしていないと許可されません。また、対象施設がなくても施設として供される予定の土地も施設として同じ扱いとなります。

5.飲食店営業の許可要件

社交飲食店(第1号~3号許可)は、風俗営業許可申請の前に飲食店営業許可を取っておく必要があります。つまり、スナック、キャバクラ等を営業するためには、風俗営業許可の他、飲食店営業許可が必要ということです。

ちなみに飲食店営業許可の要件は風俗営業許可の要件とは異なります。以下は飲食店営業許可の要件となります。

(1)飲食店営業許可が制限される地域

住居専用地域、住居地域では営業所面積などの制限があります。

工業専用地域では飲食店は営業できません。

(2)人的欠格要件

欠格自由に該当する人や法人は許可されません

  • 食品衛生法または同法に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者
  • 食品衛生法第22条から第24条までの規定により許可を取り消され、その取り消しの日から起算して2年を経過しない者
  • 法人であって、その業務を行う役員のうち、上記のいずれかに該当する者がある場合

(3)設備の要件

主な設備は下記の通りです。詳しくは各都道府県の保健所へお問い合わせください。

  • 【区画】 使用目的に応じて、壁、板などにより区画する
  • 【床】 タイル、コンクリートなどの耐水性材料で排水がよく、清掃しやすい構造
  • 【天井】 清潔で清掃しやすい構造
  • 【明るさ】 50ルクス以上
  • 【換気】※① ばい煙、蒸気等の排除設備
  • 【洗浄設備】※③ 原材料、食品や器具等を洗うための流水式洗浄設備
  • 【従事者専用・流水式洗浄設備 従事者専用の流水受槽式手洗い設備、従業員専用の手指の消毒装置
  • 【更衣室】 清潔な更衣室または更衣箱を作業場外に設ける
  • 【保管設備】 原材料、食品や器具類等を衛生的に保管できる設備
  • 【給水設備】 水道水または飲用適と認められる水を供給できるもの
  • 【便所】 作業場に営業のない位置および構造で、従事者に応じた数を設け、使用に便利なもので、ねずみ、昆虫などの防除設備、専用の流水受槽式手洗い設備、手指の消毒装置を設ける
  • 【汚物処理設備】 ふたがあり、耐水性で十分な容量があり、清掃しやすく汚液や汚臭が漏れないもの

調理場設備要件

  • 【冷蔵設備】 食品を保全するために、十分な大きさを有する冷蔵設備を設ける
  • 【洗浄設備】 洗浄槽は2槽以上とする
  • 【給湯設備】 洗浄液および消毒のための給湯設備を設けること

客室設備要件

  • 【客室】 客室および客席には、換気設備を設けること。客室および客席の明るさは10ルクス以上とすること
  • 【客用トイレ】 客の使用する便所があること。また専用の流水受槽式手洗い設備があること