1.婚約とは?

婚約とは、『結婚を約束』することです。約束という言葉が使われている通り、まだ結婚せず、かつ将来結婚を予定している状態のことです。

日常会話、ドラマでもよく「婚約」という言葉を耳にしますが、そもそも婚約の意味があやふやに覚えている方もおります。ここでは『婚約』について詳しく説明します。

(1)婚約が成立するタイミングは?

『約束』という言葉が使われています。そーなると約束が成立する(婚約が成立する)法律があると思われますが、婚姻、離婚等の法律が示している『民法』には、規定しておりません。
規定がないからと言って当事者同士、自由に決められる訳でもありません。婚約トラブルの歴史はそれなりに存在し、この場合、裁判の『判例』(裁判上の判断)があります。

①判例による婚約が成立するタイミングは?

判例では、婚約は「口約束」で成立すると判断しています。軽いイメージがありますが、将来夫婦となる男女二人それぞれ合意していればOKということです。

②口約束以外の約束は必要なのか?

婚約=婚約指輪、結婚式を挙げる、結納等『形式を行う』のが大半のイメージ。また堅実な方だと書面に残す人もいますが、結論から言えばこれらの型式は必要とせず、『口約束』さえあれば、婚約は成立します。

(2)婚約が成立しないケース

口約束で婚約したとしても、以下の場合だと成立しません。

①相手を口説くために約束する

男性または女性が相手を射止めるために、「結婚しよう」「結婚したい」等の言葉を使った口約束は成立しません。この約束は『射止める(付き合うだけのため)』だけのために使ったのであって、婚約を約束したとは言えません。

②一時的な感情の盛り上がりで約束

クリスマスなど恋人同士が盛り上がり、ついつい「結婚しよう」などの言葉を使う時があります。このような一時的の感情の盛り上がりで婚姻を約束した場合、婚約が成立したとされる可能性は低いと言えます。

(3)「婚約」が成立しているか否か、裁判所が判断する基準

婚約は口約束でも成立すると言いましたが、一方、口約束だから故に当事者の意思が異なるケースもあります。

例えば、口約束した時、お互い婚姻の意思があっても、後に男性側の気が変わり「あれは一時的な盛り上がりで言った言葉だ」と言えば、婚姻は成立しません。そんなあやふやな状態では女性側が悲しむだけです。

このようなケースもあるため、裁判所は婚姻が成立していたか否かを判断基準が考慮されています。

裁判所の判断基準

  • 二人の合意が第三者(親、兄弟、友人、勤務先など)にも明らかにされたかどうか
  • 二人の同意に基づいて新たな生活関係が形成されたかどうか
  • 継続的な性関係があったかどうか
  • 二人が合意したときに、その合意の意味を判断できる成年者であったかどうか
  • 父母に言われて簡単に交際を絶ったかどうか

上記の他に、下記の二つが特に判断基準として考慮されているようです。

  • 当事者間における結婚の合意
  • 周囲の人間から二人が婚約者として認知されているなどの公然性

婚姻成立している判断基準を簡単にまとめると…

お互い婚姻の意思があり、かつ、男女二人の交際が周囲から単なる交際ではなく、公に(公然性)婚約関係と認められている状態の場合、婚姻が成立していると判断されます。

(4)「婚約」が成立した後の義務

婚約が成立すると、婚約前提とした交際をし、婚姻届を提出、その後夫婦としての共同生活を始められる状態となるように努力しなければならない義務を負います。

義務に違反したら?

交際をしない、いつまでたっても婚姻届けを提出しない、合意なく別々の生活が続いている、不貞行為をした等、義務に反する行為をすると、「婚約を破棄」となり、慰謝料を請求されることもあります。

2.『婚姻関係が破綻していない』とは?

不倫相手に慰謝料を請求する条件の一つに「婚姻関係が破綻していない」ことが求められます。

では、そもそも「婚姻関係が破綻していない」とはどんなことか、ここではその内容を詳しく説明します。

(1)なぜ「婚姻関係が破綻していない」ことが条件となっているのか?

①裁判所の判断

これには、過去の裁判の判例が示してあります。

『不倫の慰謝料を配偶者の不倫相手に請求できる根拠は「婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益」が侵害されたからである』

上の裁判判例を簡潔に言えば、「幸せな婚姻生活は法律上、保護に値する」とも言えます。

②裁判所の判断を根拠にすると…

既に婚姻関係が破綻している夫婦は、上記のような裁判所が判断した法的保護に値する利益があるとは言えません。これによって、配偶者の不倫相手は不法行為責任を負わない(慰謝料を支払う必要がない)とも言えます。

不倫したときから婚姻関係が破綻していれば、別に保護しなくても(精神的苦痛も受けてないし、慰謝料もいらないでしょ)いいでしょう?っと判断している訳です。

(2)婚姻破綻の定義とは?

婚姻破綻の定義は以下のように定められています。

『婚姻破綻とは主観的要素客観的要素で構成されており、「夫婦が婚姻継続の意思を実質的に失っており(主観的要素)、婚姻共同生活を回復することが不可能であると客観的に判断できる状態(客観的要素)」と定められています。

主観的要素とは?

主観的要素とは「夫婦が婚姻継続の意思を実質的に失っている状態」を言います。ここで重要なのが、「夫婦が」です。そう、夫婦二人とも同じ意思で、婚姻継続の意思を失っている状況が必要なのです。

例えば、不貞行為の時に夫婦の一方が婚姻継続の意思を失っていたと思っていても、他方が失っていないと主張すれば、同じ意思とは言えません。結果、主観的要素のみで婚姻破綻が認められることは、現実的にはあまりありません。
※婚姻継続の意思を失っている意思があっても、慰謝料欲しさに失っていないと主張するケースもあります。

客観的要素とは?

客観的要素とは「婚姻共同生活を回復することが不可能であると客観的に判断できる状態」を言います。簡単な判断基準は、「相当期間の別居」です。
この「相当期間」について、年数の基準は定められていません。

例えば、同居期間が20年ある夫婦と同居期間が1年しかない夫婦がいて、それぞれの別居期間が3年の場合、前者(20年)の夫婦は認めらる可能性が低いですが、後者(3年)の夫婦は認められる可能性が高いです。別居期間が長けりゃいいという訳でもありません。別居期間中、夫婦間で連絡が継続しており、夫婦関係修復への努力があるような場合等は、婚姻破綻と認められる可能性が低いと言えます。

(3)主観的要素の証明

夫婦が主観的要素(婚姻継続の意思を失っている)を認めていれば問題ありませんが、不倫相手が「あなたたち夫婦は婚姻継続の意思を失っている!」と主張することは困難です。これを主張するには不倫相手は夫婦の「主観(何を考えているのか)」を証明しなければならないのです。相手の考えを証明することなど難しいですよね。

極まれに証明できるケースとしては…

  • 既に離婚届に夫婦が署名捺印していて後は提出するだけであった
  • 離婚自体には同意したうえで家庭裁判所で調停を行っていた

等なの状況が必要です。

3.婚姻関係の破綻は加害者、被害者どちらに有利なのか?

婚姻関係が破綻していれば、加害者に有利な状況と言えます。不倫時、破綻していれば加害者は慰謝料を払う必要が無くなるためです。

そのため、加害者は慰謝料の支払いを阻止すべく「婚姻関係の破綻」の立証をしなければなりませんが前述した通り、現実的に難し事なのです。

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